一般的な病気と予防法

猫は本来、弱っているところを見せまいと具合の悪さを隠す生き物です。そのため、病気の発見が遅れてしまうことがよくあります。愛猫の健康を守るためには、一般的な病気の知識と予防方法を知り、日常的な健康チェックを行うことが大切です。この記事では、猫がかかりやすい主な疾患と予防法を解説します。
猫は痛みや不調があっても表情に出さないことが多いため、飼い主が日常の変化を注意深く観察することが健康管理の第一歩です。
猫がかかりやすい主な病気
猫は特定の病気にかかりやすい傾向があります。早期発見のために症状を知っておきましょう。
1. 泌尿器系の病気
猫、特にオス猫は泌尿器系の病気にかかりやすい傾向があります。主な疾患には以下のようなものがあります:
- 下部尿路疾患(FLUTD):頻尿、排尿時の痛み、血尿などが見られます
- 尿路結石:ストルバイトやシュウ酸カルシウム結石など、結石の種類によって治療法が異なります
- 腎不全:特に高齢猫に多く見られる病気で、水を多く飲む、体重減少などの症状が現れます
- 膀胱炎:頻尿や排尿困難、血尿などが見られます
緊急サイン:猫が排尿しようとしても出ない、または少量しか出ない状態は緊急事態です。特にオス猫は尿路閉塞を起こすと命に関わるため、すぐに獣医師の診察を受けてください。
2. 口腔内の病気
猫の約80%が3歳までに何らかの歯周病にかかるとも言われています。
- 歯周病:歯垢や歯石の蓄積による歯肉の炎症や歯の損傷
- 歯肉炎:歯肉の赤みや腫れ、出血を伴う炎症
- 歯の吸収病変(FORL):歯が内側から溶けていく病気で、猫に特有の疾患です
口臭の悪化、よだれが増える、食べ方が変わるなどの症状に注意しましょう。

3. 消化器系の病気
猫の消化器系の病気は比較的よく見られます。
- 炎症性腸疾患(IBD):慢性的な嘔吐や下痢、体重減少などが見られます
- 胃炎・腸炎:嘔吐や下痢、食欲不振などの症状が現れます
- 肝リピドーシス(脂肪肝):急な食欲低下や体重減少、黄疸などが見られます
- 異物誤飲:おもちゃや糸、毛糸など様々な異物を誤飲することがあります
猫が24時間以上食べない場合は、肝リピドーシス(脂肪肝)の危険があるため、早めに獣医師に相談しましょう。
4. その他の一般的な病気
- 肥満:日本の室内猫の約30〜40%が肥満といわれており、様々な疾患のリスク要因になります
- 糖尿病:多飲、多尿、体重減少などの症状が見られます
- 甲状腺機能亢進症:高齢猫に多く、体重減少、多食、多飲などの症状が現れます
- 猫風邪:ヘルペスウイルスやカリシウイルスなどによる上気道感染症で、くしゃみ、鼻水、目やになどが見られます
予防のための基本ケア
猫の病気を予防するための基本的なケアについて解説します。
1. 定期的な健康診断
予防医療の基本は定期的な健康診断です。年齢に応じた健診頻度を守りましょう。
- 若い猫(7歳まで):年1回
- シニア猫(8歳以上):半年に1回
健診では、身体検査だけでなく、血液検査や尿検査なども定期的に行うことで、早期に異常を発見できます。

2. ワクチン接種
猫が感染症から身を守るためには、適切なワクチン接種が重要です。
- コアワクチン(基本ワクチン):猫汎白血球減少症、猫カリシウイルス感染症、猫ウイルス性鼻気管炎の3種混合ワクチン
- ノンコアワクチン(任意ワクチン):猫白血病ウイルス感染症、猫クラミジア感染症など
子猫は生後8〜9週齢からワクチン接種を始め、その後は獣医師の指示に従って適切なスケジュールで追加接種を行います。成猫は通常年1回の接種で予防効果を維持できます。
3. 寄生虫対策
外部寄生虫(ノミ・ダニ)と内部寄生虫(回虫・条虫など)の両方の対策が必要です。
- ノミ・ダニ予防薬:月1回の定期投与が基本
- 内部寄生虫駆除薬:3〜6ヶ月ごとの投与が推奨
室内飼いの猫でも、人の衣服や靴などを介して寄生虫が持ち込まれる可能性があるため、予防が必要です。
4. 適切な食事管理
バランスの取れた栄養と適切な体重管理は、多くの疾患の予防につながります。
- 年齢や健康状態に合った高品質のキャットフードを選ぶ
- 適切な量を与え、肥満を防ぐ
- 十分な水分摂取を促す
- 食事の急な変更は避け、徐々に切り替える
猫は水をあまり飲まない動物です。ウェットフードを取り入れたり、水飲み器を複数設置するなど、水分摂取を促す工夫をしましょう。
5. 口腔ケア
歯周病予防のために、定期的な歯磨きや口腔ケアが重要です。
- 専用の歯ブラシと猫用歯磨き粉での定期的なケア
- デンタルケア用のおやつや食事の活用
- 獣医師による定期的な歯石除去

病気の早期発見のためのチェックポイント
日常的な健康チェックで早期に異常を発見しましょう。以下の変化に気づいたら、獣医師に相談することをお勧めします。
食事・排泄の異常
- 食欲不振が24時間以上続く
- 水を飲む量の増加
- 頻繁なトイレ
- 排尿困難や血尿
- 便秘または下痢が続く
- 吐き戻しや嘔吐が続く
行動の異常
- 異常な活動量の減少
- 隠れたがる
- 同じ姿勢を長時間保つ
- 痛みのサイン(鳴く、攻撃的になる)
- 異常な毛づくろい(特定の部分を過剰になめる)
- いつもと違う鳴き声
身体的な異常
- 体重の急激な増減
- 口臭の悪化
- 被毛の状態悪化(つやがない、抜け毛が増える)
- 皮膚のできものやしこり
- 呼吸の異常(呼吸が速い、苦しそう)
- 目やに、鼻水の増加
緊急受診が必要なサイン
以下の症状がある場合は緊急で獣医師の診察を受けてください:
- 呼吸困難(口を開けて呼吸する)
- 痙攣・発作
- 24時間以上の排尿がない
- 外傷や出血
- 急激な衰弱
- 繰り返す嘔吐
- 倒れたまま起き上がれない
健康記録の管理
愛猫の健康状態を継続的に記録することで、異変に気づきやすくなります。
- 体重の定期測定(月1回程度)
- 食欲や水分摂取量の変化
- 排泄の回数や状態
- 行動の変化
- ワクチン接種や投薬の記録
これらの記録は獣医師の診察時にも役立ちます。スマートフォンのメモやカレンダー機能、専用のペット健康管理アプリなどを活用すると便利です。
まとめ
猫の病気予防には、定期的な健康診断、適切なワクチン接種、寄生虫対策、正しい食事管理、そして日々の健康チェックが重要です。猫は症状を隠す傾向があるため、普段の様子をよく観察し、少しでも異変を感じたら早めに獣医師に相談しましょう。
予防医療と早期発見・早期治療によって、愛猫の健康を守り、長く幸せに暮らすことができます。日々の小さな気配りが、大切なパートナーである猫の健康維持につながります。
この記事の内容は一般的な情報提供を目的としています。個々の猫の状態は異なりますので、具体的な健康上の問題については必ず獣医師に相談してください。
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